読売新聞の人生案内が単行本にまとめられても、たぶん自分は買わないと思うのだが、「内田樹の生存戦略」を手に取って、「人をほめるときの基準を教えてください」の項だけ読んで、これは面白い!とすぐに買ってしまったのは、何故なのだろう、ふと考えてみる。
理由の第一は、内田樹は信頼がおける、とたぶん私自身が感じているからだろう。
第二は、文章が明確で、かつ、どこかに大人の余裕とユーモアを感じているからだろう。
第三は、はっきりと遠慮せず、物を言っているということ。
例えば、サラリーマンから、脱サラして独立しようか迷っています。という相談に、
好きにしてください。まあ、そのまま大企業に入るほうがいいと思いますよ。独立するなら、こんなところに身の上相談しに来る前にもうやっていますから。という回答。
内田樹本人が、「僕の人生相談の回答はわりと「冷淡」です」と言いきっている。
その理由は、まえがきに書いてある。
それは質問に直接お答えしないで、そもそもそのような問いがなぜあなたに取り憑いたかという「前提」の分析の方に手間をかけているからです。確かに。読んでいて、心地よいのは、狭い視野から解放され、その問いの背景や本質が分析されているからだと思う。
…こういう人生相談で、「私はAすべきでしょうか、それともBすべきでしょうか」という問いの形式で訊ねてくる人は、「AかBの二者択一しかない」(でも、どちらも選びたくない)」という袋小路に入り込んでいます。でも、そこにいる限り、悪いけど、出口はありません。
そして、どんな愚問であっても、何より、内田樹本人が面白がって答えているような気がするからでしょうね。
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