2020年のオリンピック開催地が東京に決まるかもしれないと騒いでいた前夜の映画館で観た。
小さめの上映室でもまばらな人。私を入れて十四、五名というところだろうか。
年齢層はやはり自分の年齢に近い人がほとんど。そして私同様、一人で観に来ていた人が多かった。
冒頭、「モリスンは朝、空港で」が流れてきて、ホテルで寝起きの髪の毛がちょいリーゼント気味の佐野元春が映る。若い。
そして、何年ぶりにこの曲を聴いただろうか。
1983年の中野サンプラザのライブ映像らしいが、とにかく元春の声が若い。
CDと同じキーでライブで歌っている元春は私はリアルタイムで見たことがなかったので、とても新鮮だった。
「悲しきレイディオ」、「スターダストキッズ」、「彼女はデリケート」、「終わりは始まり」、「ハートビート」、「ガラスのジェネレーション」…
曲を聴きながら、空気が1980年代に戻ったような気がした。
そう、このころは、音楽はレコードプレーヤーで聴き、テープにダビングしていたのだ。
コンサートの様子は、とにかく元春が動きまくる。
自分でも演劇的と言っているようだが、少しやりすぎなぐらい体を動かしている(ダンスという感じだけでもない)
あれだけ動けば、相当汗をかくと思うが、スーツとネクタイ姿を最後まで崩さないところが、元春らしい。
HeartLandのメンバーも若い。キーボードの西本 明、ドラムの古田たかし、そして、元春に、いつもメンバー紹介で、「そして最後に」と振られるサックスのダディ柴田。
この段階で、すでにこのHeartLandと元春の演奏は完成のレベルに達している。
終わり方は、ちょっと物足りなく感じる人は多いかもしれない。
しかし、このフィルムが撮られたのは、ミュージックビデオもなかった頃で、アルバムは「Some Day」、「No Damage」を出したところまでの元春なのだ。
そして、当時は映像の製作スタンスも、もっと淡白だったのかもしれない。
一番、面白かったのは、佐野元春がベッドインのジョン・レノンに扮し、 インタビューに答えるところ。
インタビュアーに、「何故、外国(ニューヨーク)に行くのか?」と聞かれ、元春は、
「多くの人々にもてはやされ、僕は自分が何でも出来るようなすごい人間なのではと思うようになった。しかし、それは勘違いだとすぐに気づいた。だから、本来の自分を取り戻すために行くんだよ」という趣旨の答えをしている。(無言なのだが回答の字幕が流れている)
これは意外と本音なのではと思っていたら、本人もそうコメントしているようだ。
私が元春を好きになったのは、この渡米で作られた「Visitors」からだった。
No Damageの世界には、今ひとつ自分はなじめなかった。
(今はそうでもないが、当時はちょっと年代的に上の人が聴く音楽かなと感じていた)
そういう意味で、Making of 「Visitors」だったら、もっと感動しただろうなとは思う。
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