梅枝は、須磨に都落ちした光君が、その時に結ばれた明石の君(この時には明石の御方)との間にできた娘 明石の姫君を東宮妃として入内させるため、裳着の儀の準備をする六条院の様子が描かれている。
明石の姫君に持たせる香壺に入れる薫物(たきもの…調合した香)を、六条院の女君である朝顔、紫の上、花散里、明石の御方と、父親である光君がそれぞれ調合して作り、その香りのよさの優劣を競い合っている。
明石の御方は、離れて暮らす娘への思いが届くよう、「百歩の方」という百歩先でも香りが届くという香りを選ぶ。
しかし、そういう母親の思いを分かっていながら、光君は、裳着の儀に明石の御方は参加させない(紫の上が法的な立場での母)。
明石の姫君入内の順番を左大臣の立場も考え譲る老成した光君の姿も見られる。
ひらがなの書いた文字の美しさを批評するにあたり、自分の関係した女性を挙げ、次々と批評していく光君の鋼のような精神の強さも健在である(恋の思いを伝える和歌に不可欠なひらがなの字も相手を選ぶ基準の一つだったんですね)。
藤裏葉は、その明石の姫君が東宮に入内する。その際、紫の上が、明石の御方が娘の付き添いになるよう提案し、母子が共に暮らせるようにしたことは、彼女の人柄の良さがわかるエピソードだ。
光君は翌年四十歳になる。冷泉帝(実は光君の息子)は、光君をおもんばかり、彼に上皇に準じる地位を授与する。
そして、この話では、光君と異なり、いまひとつぱっとしない息子の夕霧がようやく自分が思いを寄せていた内大臣の娘と結婚する。夕霧の身分も中将から中納言へ格が上がる。
六条院に行幸した冷泉帝。彼とそっくりな光君が琴を演奏する。そして同じ場で笛の役を務める中納言の夕霧も、これまたそっくり。
光君の血縁で固められた高貴な血筋。
物語はこの後、光源氏の栄耀栄華の頂点となる「若菜」を迎える。
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